どちらかと言えば、日本の方が特殊なのかもしれませんが、日本の釣りは、あらゆる道具とテクニックを駆使して魚に餌を食わせる。食わせたら、バラさずにさっさと取り込む。食いに悪影響がないなら、丈夫な道糸を使って確実に魚を取ることを目指します。他方、NZの沖釣りは、スポーツ・フィッシング主流で、ターゲットに対して限界までの弱い道糸を使います。(ハリスは、逆に太い物を使う事が多い。)この理由は、ラインクラス(道糸の強度)毎に魚の大きさを競うからです。IGFAのサイトに行けば、道糸や仕掛けが詳しく規定されているのがわかります。日本の沖釣りは体重制限のない相撲で、NZやUSの海釣りは、体重によりクラス分けされているレスリングの様な物でしょうか。もう一つの理由は、釣りのやり方が違います。日本の乗合船の様な釣り船は、海外ではあまりありません。日本の様に多数の他人同士がひしめき合って釣りをする時に弱い道糸で魚とやり取りを楽しんだりすれば、必ず誰かとオマツリになって道糸切れになります。魚を針にかけたら、出来るだけ速やかに取り込まなくてはオマツリで糸切れバラシとなるだけでなく、周りの人にも迷惑をかけます。これに対し洋式スポーツ・フィッシングは、乗合船形式ではなく、ボートをチャーターして行います。大物がヒットすれば、船長はこの魚を取り込む事だけに集中して操船します。他の人はすべての仕掛けを巻き上げ、そのファイトが決着するまで応援したりしながら待機となります。細い道糸でも、かかった魚を常に船で追いかけることにより時間をかければ相当の大物も釣り上げる事が可能です。例えば、1キロ(キス釣りのハリス程度、1号位の太さ)の強度のナイロン道糸で5キロのカツオを釣り上げる事も出来ます。(相模湾で3キロのカツオを狙う時、船宿は、新素材8号の道糸に12号以上のハリスを推奨します。)道糸に比べ、ハリスや釣り針は日本よりごつい物を使います。また、スポーツ・フィッシングといえば、トローリングとなりますが、魚を針にかける事より、その後魚を取り込むまでのファイトに価値と楽しみを見出しているようです。私等は、魚をどう針にかけるかが一番面白いと思うので、トローリング(特に他人の船での)はそれ程面白いと感じません。このような釣りでは、釣り人の腕前よりは、船長の能力が遥かに大きく結果を左右します。また、細い道糸を使いますのでドラッグ性能の優れたリールが必須です。
カジキやマグロ、ヒラマサを狙うスポーツ・フィッシングではなく、日本で言う磯釣り、ボートからの小物や根魚釣りというのもあります。NZでは、タイ、ホウボウ、マトウダイ、テラキー(タカノハダイに似た魚で美味)等が好んで釣られます。磯、砂浜、防波堤等で釣りをする人もいますが、たいていの家ではボートを持っているので、小型ボートでこれらの魚を狙う人も多いです。こういう時は、IGFAとは関係なく晩のオカズを手に入れるのが目的ですから、大体が太い糸、太い竿、大きな仕掛けを使います。日本の様な繊細な釣りはしません。それでも、魚も大雑把にできているのか結構釣れます。
それから、魚種毎に釣り人一人が一日に釣って良い数と、最小サイズが規定されています。例えば、マダイなら30cm以上を7枚までです。(但し、沢山いる魚、例えばマアジ等には制限がありません。)これを破った場合の罰則は厳しく、ボートや釣具を没収されることもあるそうです。そもそも、釣りが国民的楽しみなのに資源保護のルールが全くない日本は、国際的には極めて珍しい国です。小さな魚まで、釣れる魚は根こそぎ獲ってしまうような事が横行するから、鯨を食うなとかマグロを獲るな等と国際的反感を買う原因にもなっているのではないでしょうか。